松阪市議会議員 植松泰之 市政報告
うえまつ―しん20号-2
平成28年1月20日

教科書採択は薮の中

四年に一度行われる教科書採択。今年は来年度から使用する中学校用の新しい教科書を決める年に当たり、過日決定されました。しかし、これまで教科書の採択は完全非公開で行われていました。これでは公正さに欠けるのではないかということで本会議にて質し、会議の一部の公開を実現したところです。
では、会議を非公開にしていることで、どういった問題が起きているのでしょう。教科書採択の現場の実態を紹介しながら探っていきたいと思います。

教科書決定の場が非公開とは!

まず協議される場は「松阪地区教科書採択協議会」(以下、「採択協議会」という。)というところです(紙幅の関係上、誰が協議会委員であるかはここでは問題にしません)。この場で各教科それぞれ数種類ある中から一冊だけが選出されます。そして、選出された各教科の一冊が次の協議の場である松阪市の教育委員会に挙げられ、早くもそこで最終決定されます(とは言うものの実質的には前段の「採択協議会」で既に決まっているのですが)。ここで問題にしたいのは、子供たちが毎日勉強する大切な教科書を決めるためのこの二つの協議の場が非公開だという点です。
先般の本会議における私からの追及によって、教育委員会委員長から「最終決定する教育委員会だけは公開します」との答弁を引き出しはしました。しかし、実質的な決定の場となっている「採択協議会」は頑(かたく)なに非公開を続けると言います。極めて残念でなりません。

不十分な情報公開

勿論、後日(とは言っても一ヶ月以上経ってから)両会議とも会議録を情報公開請求すれば見ることができます。ところが、開示される会議での“やり取り”は(意図的に?)取捨選択され、最も重要な所とされるそれぞれの教科書の「良いところ・悪いところ」の議論が全て削除されてしまっているのです。これでは「何故、その教科書が選出されたのか」が全く分からず、情報公開の意味を成しません。
「採択協議会」に先立って、事前に数名の調査員(教職員が担当)によってすべての教科書の内容が調査検討され、その評価が調査報告書としてまとめられ、「採択協議会」で報告されます。この調査報告書も後日、開示されるのですが、残念なことに書かれている評価はどれもそれぞれの教科書の「良いところ」ばかりで「悪いところ」が記載されていません。ここでも優劣が分かりません。実際には「採択協議会」において「悪いところ」も調査員が口頭で報告している(それを前提としなければ成り立たない発言内容が一部残っています)はずなのですが、会議録からは削除されてしまっているのです。
ここが「教科書採択は藪の中」といわれる所以(ゆえん)なのです。「開かれた教科書採択を目指す」としながら、実態は大きく異なっています。

非公開によって公正を期すとは?

また、会議を非公開にする理由として、教育長は、公開してしまうと「静謐(せいひつ)な環境を保てない」「公正を期することができない」ことを挙げます。しかし、市議会をはじめ、市行政の会議は原則すべて公開しています。それでも静謐な環境は保てているし、公正さも侵されていません。なぜならしっかりと公開(傍聴)ルールを制定し、それに則って運営しているからです。決して会議を非公開にしているからではありません。理由にもならない理由を述べられては議論にもなりません。

会議の公開は「公正さ」の第一歩

これまでも教科書採択に関しては、各教科書に対する評価基準が極めて“あいまい”である点や、採択に際して保護者や地域の意見が反映されていないといった問題点を指摘してきましたが、まずは実質的な決定の場である「採択協議会」を公開にするだけでも、このように沸きあがる疑念の幾ばくかは払拭(ふっしょく)されるのではないでしょうか。
松阪市の教育委員会の今後の良識ある対応が期待されます。